情婦 アメリカ(1957)
監督
 ビリー・ワイルダー

原作
 アガサ・クリスティ

出演
 タイロン・パワー
 チャールズ・ロートン
 マレーネ・ディートリッヒ
 エルザ・ランチェスター  
 この映画の原題は、Witness for the Prosecution(検察側の証人)であるが、1958年の日本公開では『情婦』である。ビリー・ワイルダー監督の作品としては、オードリー・ヘップバーン主演の名作『昼下がりの情事』を思い出すことが多く、どうしても「情婦」ではなく「情事」と読んでしまうのであるが、あくまでも「情婦」である。

 最近の外国映画の日本公開時のタイトルは英語の読み方をカタカナ表記にしているものが多いような気がするが、映画のタイトルが興行成績にも影響するため、かつては様々な工夫をしていたように思えるのは気のせいだろうか?

 この映画は、アガサ・クリスティのミステリーの原作を名匠ビリー・ワイルダー監督が映画化したまぎれもない傑作と言ってよいであろう。この映画のEndが出た後で、以下のようなメッセージが流れる。

 
「この映画をご覧になっていない方々のためにも−結末は決してお話にならないように」

 よってこの注意に従えば、ここでこの映画の結末を述べるわけにはいかないので、一部を述べるだけにする。ただ、たとえこの映画の結末を話したとしても、その面白さを十分に伝えることは難しく、この映画を見ることなしにその面白さを経験することはできないであろう。

 さてこの映画は、ローマの町を走るタクシーの中で、退院して自宅兼事務所に向かう老弁護士ウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)と看護婦(エルザ・ランチェスター 実生活においてチャールズ・ロートンと夫婦とのこと)との軽妙な会話が行われているシーンからこの映画は始まる。

 この二人のやり取りからしてこの映画への期待は膨らむのだが、その期待に違わず未亡人殺しの容疑をかけられたレナード・ヴォール(タイロン・パワー)が事務所を訪ねてくる。ウィルフリッドにとっては退院後でもあり、はじめは気乗りのしない事件であったが結局はこの事件の弁護を引き受けるのである。しかしこの事件は、未亡人が遺産をレナードに送るという遺書があったことから極めて不利な状況にあった。

 こうした背景を基に、この映画は見事な法廷劇として検事と弁護士の見事な応酬が展開されるのである。そして裁判の途中でレナード・ヴォールの内縁の妻(マレーネ・ディートリッヒ)が検察側の証人として登場したりして、映画史に残る見事な結末を迎えるのである。映画ファンなら必見の映画というべきであろう

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